ありがとう、さようなら。
随分遠回りをしてしまった。だがもう終わったのだ。
スタンドライトを買ったのはマンションを購入する最中、金銭感覚が狂いに狂っているときだった。あの時期の浪費は本当に恐ろしいものがある。そんな時、間接照明でお洒落空間を創り出してみせる、と買ったのだった。
だが、入居してすぐに気づいた。ダウンライトで十分。だってうち、豪邸じゃないから。天井から吊るすペンダントライトも張り切って買ったのだが、それですらダウンライトのおかげで出番がないのに、スタンドライトの出番などあるはずもない。
それでも、ウン万円もしたスタンドライトをすぐに見放す訳には行かなかった。お洒落なオブジェだと何度思おうとしたことだろう。でも掃除機やクイックルワイパーを掛ける度に動かさなくてはならない面倒くささ、そして放っておくと積もるホコリとの闘い。眺めていても心がトキメクどころか、押し寄せてくるモヤモヤとイライラ。
そんな負しか生み出さないスタンドライトとおさらばするため、捨てることが嫌いな夫を、それはもうしつこく説得し、やっと処分することに納得してもらえた時、どれほど嬉しかったかを、もはや言葉で表すことはできない。そんな簡単な感情ではないのである。
六年もの間、一度も明かりを照らすことはなかった。だが我が家での役目を立派に終えたのである。ありがとう、さようなら。
昔々診療所で使われていたらしい、スタンドライト。もらわれるところで可愛がってもらうのよ。達者でな。