昨夜、私は大切なものを刈り取ってしまった。

事件は昨夜起こった。驕りが無かったかと聞かれればあったかもしれないし、緊張感はあったかと聞かれて自信を持って首を縦に降ることはできないかもしれない。でも失敗は誰だってする、人間だもの。

 

昨夜、私は夫の大切なものを刈り取ってしまった。そう、私は坊主頭を作っていたのだ。ハチ近辺を念入りに、と注文を受けたので私の注意力・集中力というものはハチの時点で使い果たされていたのかもしれない。とりあえず刈ってしまった。夫のもみあげを刈り上げてしまった。

 

正直言って、もみあげの何が正解で何が誤りなのか、私は分かっていなかった。否、今でも理解しきれていない。でもよく分からないなりに、やってしまったと思った。だから「ちょっと短くなっちゃったかも」と私は言った。

 

だが、夫の目をごまかす事は出来なかった。そりゃそうかもしれない、毎日見ているもみあげだもの。そのもみあげが、意図知れず下手なラインが入ったみたいに途中でぶつ切りにされていて、ごまかされる方がどうかしている。


でも刈ってしまったし、また生えてくるし、所詮もみあげだし、まさかそんなに大事なものだなんて思ってもいなかったので、もみあげをいつもより2センチ短くしなくてはならずショックを受けた夫よりも、たぶん私が受けたショックの方が大きかったと思われる。自分でも何を言っているのか分からない。あまりにもショックが大きすぎたのだ。

 

誰も見てないって、また二、三日したら生えてくるって、みんなそんなもんだって、と必死に慰めの言葉を送るが、慰められる事は一切なく、夫はしばらく鏡の前で俯いていなさった。いっそのこと五厘刈りにしてやろうか、と自棄になりかけた時には本気で止めた。それが唯一私のできる事だった。


寝る前、寝室が真っ暗な中、坊主の画像を検索して自分のもみあげが間違っていないかを調べていた事は誰にも言わない。肩を震わせていた事も、枕が湿っていた事も、墓場まで持っていくよ。

 

わざとじゃなかったんだよ、ごめんなさい。

 

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韓国冷麺を夫が作ったのだが、具無し・麺オンリーかつ食器ではなくボウルで出てきて大変ワイルド。いくらなんでも・・・。