IBIKI

FONS(fear of not sleeping/寝る時間が無くなるかもしれなくて不安になること)を抱える私に立ちはだかる試練。そう、それは夫のイビキ。春には副鼻腔炎にかかわる諸々の手術を受け、それによって夫のイビキも解消されるかと期待していたのだが、そんなに簡単に快適な睡眠が与えられる訳ないのであった。

 

夫が盛大にイビキをかいて寝ている横で寝れないので、夫の喉付近をこねくりまわしてみたり、顎の位置を上下左右に時には繊細に時には豪快に調整してみたりしていたところ、夫よりいちいち目が覚めるからやめて、とクレームが入る。クレームを入れたいのはこっちである。

 

夫のイビキを解消するために他に出来る事を考えてみても、サージカルテープを唇の上から縦に貼っても効果がないことは分かっており、貼るとしたらガムテープくらいしかないのだが、そうするともし強盗が我が家に侵入してきた時に「この家に監禁されてる人間がいる!」と驚かせてしまいかねない。それに、窒息死して朝起きたら横に冷たくなった夫が横たわっているのも怖い。

 

というわけで、今の私に出来ることは夫をどうこうすることではなく、自分の身を守ることだけ。つまり耳栓をつけることだけなのだ。なぜ夫が口を塞がなくて済んでいるのに、私が耳を塞がなくてはならないのか、全然納得がいかない。だが、そうでもしないと睡眠不足で発狂しいつか自らの手で夫を絞め殺してしまいかねない。そこまで事態はひっ迫しているのだ。

 

耳栓は寝ていると痛くなるようで、無意識のうちに外してしまうことがあるのだが、そんな時に夫のイビキで目覚めてしまうと、暗闇の中「私の耳栓はどこ!?」と半狂乱になって探す羽目になるので、もうそろそろ夫の口をガムテープで塞いでも許されますか。空気穴はちゃんと空けてあげますから。