髪をかき上げて

五年ほど鎖骨くらいの長さだった髪を短くした。いつも切ってもらっていた美容師は「髪質が~」と言って短く切ってくれないし、施術中にドラクエウォークするし、物品を売りつけてくるので、別の美容室を探すという手間はかかったが、どうしても短くしたくなってしまったので、もう切るしかない。

 

新しい美容師さんは熱い気持ちで私の願いを叶えてくれ、すごく素敵にしてくれた。施術が終わって「どうです?素敵になったでしょ?」と聞かれ、その質問はどう少なめに見積もっても「わーっすごーい!とっても素敵ー!嬉しー!!ありがとうございますーーー!!!!!」的なリアクションが求められているのが美容師さんの顔を見ると分かるのだけれど、いかんせんそういったことができない不器用な人間なので、せっかくいい仕事をしてくれたのに、美容師さんにそれが伝えられなかったのが若干の心残り。次回は恥を捨ててオーバーめにリアクションするようにしたい。

 

そうして素敵になった私なのであったが、気になることがあった。「この髪型、どこかで見たことがある」。一体どこで見た何なのかが分からずモヤモヤしたまま二週間ほどが過ぎた。そしてある日私は気づいてしまった。私の髪型が芸人の「永野」、あの「普通にラッセンが好き」の人、に似ているということに。ようやく分かったので、夫に聞いてみると、瞬時に「全然違う。似ても似つかない」と答えが返ってきたので、おそらく似ているのだろうと推測する。

 

そしてある晩、歯磨きを終えて口をゆすごうと髪をかき上げ、鏡を見たとき、私の髪型は永野なのだ、と決定的になった。そこにいたのはまさに髪をかき上げた永野そのものだったのだ。

 

そして当然、センター分けには絶対しない、とおのれに誓った。

 

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