恐怖のサプライズバースデー

私と夫がまだ大学生だったころ、私はものすごい嫌な彼女であった。一人暮らしをしていた私のマンションに一緒に住むことを強要する。バイトを掛け持ちさせる。ブランドバッグを買わせる。

 

自分で言うのもなんだが、すごい最低な女だなと土下座したい(しないけど)のと同時に、なぜ夫は当時私と別れなかったのか不思議である。そんな女と付き合っていた夫は、レストランやカフェで突然ハッピーバースデーの音楽が流れると今でも恐怖で震える。

 

大学生の私は、彼氏にサプライズバースデーを祝ってもらいたくてたまらなかった。お願いしている時点でサプライズでも何でもない。でもサプライズなんて女子しか興味がなく、そんなことをしてほしがる彼女など、彼氏からしたらめんどくさくてしょうがない。

 

その誕生日の日、夫はまだどこのお店も予約をしておらず、そのことにこの世の終わりかと思うくらいイライラしていた私。当日予約をしてその店でごはんを食べていたとき、その恐怖の音楽、ドリカムのHappy Happy Birthdayが突如流れ出した。そしてケーキを持った店員が二人、それぞれ別のテーブルにそのケーキを持っていく。私以外の誕生日二人の元へ。

 

逃げ出せずにうつむく夫。怒りで無言になる私。そして夫は、静かに「好きなデザートなんぼでも頼んでいいで・・・」と言った。

 

夫はそれから数年間、誕生日や記念日が来るたびに、怯えながらも様々なカフェやレストランを探し出し、私を喜ばすために(怒らさないために)頑張っていた。

 

一緒にいる期間が長くなるにつれ、もうそういうのもいいか、と思うようになり、特別なことしなくていいよ、と夫に告げたときのあの安心した顔を忘れられない。どんなけ嫌やったんや・・・。

 

夫婦関係は山や谷を越えて絆が深まるんだな、と思う昼下がりである。