アヴァンティしていた

喫茶店でアヴァンティしていた。アヴァンティする(動詞)というのは、どのご家庭にもその家庭から生まれる独特の言葉というのがあるはずなのだが、うちではこのアヴァンティするというのは「盗み聞きをする、もしくはとなりの人の会話に聞き耳をたてる」という意味で使われている。語源は「SUNTORY SATURDAY WAITING BAR AVANTI」という、バーにやって来るお客さんの日常会話を聞き耳たてるという設定のラジオ番組からきている。

 

夫がパフェが食べたいと青春真っ盛りの女子高生みたいなことを言うので、喫茶店でパフェを食べていたら、20代半ばと思われる女の子二人組が来店。注文するやいなや、アンタもうやめなって、という恋愛話をし始めたのでそりゃもうアヴァンティするしかないでしょう。

 

どうやら元彼とまだズルズル付き合っているのか付き合っていないのか分からない状態で、でもSNSを除くと他にも女がいるようだがどうしたらいいのか分からない、という相談をしていた。

 

聞き役の方は、「だからちゃんと別れなって!どっちにもよくないって!」としきりに正論を言っているのだが、恋愛話というのは、正論が元来まかり通らないものであり、聞いて欲しい方はただ聞いてほしいだけというか、悲劇のヒロインになりたいだけというか、軽い自慢の場合もあるかもしれないというか、要はアドバイスが欲しいわけではないのが大半だと私は思っている。

 

私には300回以上そんな男今すぐ別れろと言ったにもかかわらず、友人はそうだね、と言いながら結局結婚して不幸な友人がいる。今でも遠慮なく「アンタの夫ほんとクソだな」と言うと、毎回「真剣に別れたいと思ってる」と言うのだが、絶対別れる気は無いのを私は知っている。ただ聞いて欲しいだけなら聞くけど、それなら私もただ言いたいことを言わせてもらう。

 

しばらくああでもないこうでもないと話していたのだが、しまいには相談している女の子が「分かってるんだよ、分かってるんだけどさあ、もうどうしたらいいのか分からない!!」と頭を振乱して泣きだした。

 

この時点でアヴァンティしていたのはもはや私だけではなく、反対側に座っている無関心そうなお姉さんも、店員もアヴァンティしていたことを私は知っている。だって最終的にみんなの視線が女の子二人にロックオンされたからね。「気持ちわかるけど・・・」と友達はなだめているが、だから別れろって言ってるだろうが、と心の中で言っているのがミエミエである。もうちょっと思っていることを顔に出さない練習をした方がいいよ、と言いたいくらいミエミエであった。

 

私は一生懸命アヴァンティしすぎて、目の前にいる夫の話は頭に入ってこないわ(夫がなぜこの期に及んで自分の話ができるのかが私には分からない)、興奮が伝わってきてつい二人組を凝視してしまうわで夫に怒られていた。でもハッキリ言って、しょうもない男に使っている時間とエネルギーほどもったいないものはないから今すぐ別れるべき。

 

f:id:momosjournal:20190317151842j:plain