最高のパン

先週、ずっと気になっていた昔ながらのパン屋に思い切って入ることにした。何を買おうかと店内を見渡すと、パンの知識など1ミクロンも持ち合わせていない私に「パン屋の良し悪しを決めるのはクロワッサンじゃ」という謎の声がどこからともなく聞こえてきて、しかも追い討ちをかけるように先に店内にいた常連らしきおばあさんも「このクロワッサンおいしいのよ、フフフ」と言っているので、とりあえずクロワッサンを一つトレイに乗せる。

 

次は何を取ろうとかと改めて周りを見渡すと、目の前には所狭しと並べられた様々なパンが。パン屋だから当たり前なのだが、選ぶことが苦手な私の頭は思考を停止した。今こそ聞こえてきて欲しい先ほどの謎の声は今では何も聞こえてこず、おばあさんはというと自分のパンを選ぶのに夢中で、アドバイスをくれず全く役立たずである。

 

謎の声がだんまりを決め込んでいるので、困った私は「この場に夫さえいれば」「夫を召喚したい」と願ったが、この場に夫はいないし召喚することもできない。ならば一刻も早くこの場から逃げ出すしかなく、混乱したまま白身魚フライパンとソフトフランスをトレイに乗せ、会計を済ませて逃げるように店を出た。

 

家に帰って戦利品を食べようとしたら、白身魚フライパンだと思って取ったパンは実はマヨコーンパンで、ソフトフランスは美味しいが、でも何故わざわざ買うかという類のパンであった。クロワッサンはおばあさんの言う通り美味しかった。

 

店には何の非もないと言いたいところだが、私が思うに店内が狭いのがよくない。なにしろ大人が三人も入れば満員状態の狭さである。先に述べたように私が入った時には既におばあさんが一人おり、おばあさんがパンを取るたびに私に肘鉄をくらわすという状況の店内に、子連れの夫婦が入店したので、もう店内はワヤである。私のような人間でなくとも今すぐ店を出たいと思うだろう。

 

だが、そのパン屋になぜかポテンシャルを感じ、どうしても諦めきれない私は、次こそは店内に何人いようとも決してうろたえず、どれだけ時間がかかったとしても欲しいと思えるパンを買う、と決意を固めて昨日リベンジ。

 

今回も店の狭さとパンの選択肢の多さにくらくらして逃げ出したくなったし、長いこと真剣にパンを選んでいることをアルバイトの高校生に訝しがられもした。だが、いくつもの困難を乗り越えて買ったパンは最高だった。やはり私の勘は間違っていなかったということと、こういう時にもおのれの執念深さは役に立つのだなということが分かったことも含めて収穫の多い一日だった。

 

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写真では美味しさが伝わらないことが悔しい・・・