夫の機転

夫がもし「ついにばばあに言ってやった!」と報告してきたとしても、「証拠がないなら信じない」と突っぱねてやろうと企みながら帰宅したその日、連絡もなく夫の帰りが遅かったので夫がとうとう逃げたと思った。

 

でも現金は持っておらず、カードの明細は妻にチェックされ、スマホの暗証番号やらなにやらも妻に知られてる男がどこかに逃げられるわけもない。少ししてから案の定帰ってきた。

 

なぜ遅かったのかというと、仕事帰りにマンションに着いたところで、エントランス付近で例の犬を連れたばばあを見かけた夫は、もういろいろ今しかないと思った。今回注意するチャンスを逃せば、妻から毎日ネチネチネチネチ恨み節を聞かされる日々から抜け出すことも叶わない。昨日は何も言っていないし聞いていないのに突然「一瞬許そうという気になったけど、許される努力を何もしてないのに許したらあなたの為にならないから思い直した」などとふざけたメッセージが送られてくる始末である。

 

だから注意しなくてはと思ったら、前方から管理人がやってきた。管理人の前では犬を抱っこしないと怒られることを分かっているので、そこでばばあはどうしたのかというと、物陰に隠れた。管理人が過ぎ去ると安心して犬を従えて再び歩き出したばばあ。そこで夫はとうとう言ったのだ「ワンちゃん、抱っこしてくださいよ」。

 

その激動の一部始終はなんと、きちんと録音され証拠として私に提出された。「(イカれた)モモちゃんのことだから証拠を出せと言ってくる」と予想し、機転を利かせた夫に大きな拍手を送りたい。これでばばあが犬を共用部分で歩かせなくなるとは思わないが、夫が絶対にやるといったことをやるかどうか、というのが焦点であったので、これからはどうやって夫を苦しめるかとか、申し訳ないという気持ちを弄ぶことできるかとか、様々な企みをせずに普通の日々が送れます。

 

追伸 「ワンちゃん」っていうのはどうなのか、という疑問だけは今も残っています。

 

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