私の生霊が

ちょっと前の話になる。緊急事態宣言が明けてしばらくたち、今のように感染者数が増え始める前、夫が同僚と飲みに行くと言い出した。万が一、夫もしくは同僚が感染する、もしくは行った先の飲み屋でクラスターが発生したとする。そうなった時に、困るのは夫の仕事でも私の仕事でもなく、私の鼻である。PCR検査がどうしても嫌なのだ。

 

そこで、「まだ飲みに行くのは早いと思う。あなたがコロナにかかっても死ぬとは思っていないし、私にうつしても別にいいが、会社の人はどう思うと思う?会社で迷惑をかけるのが死ぬほど嫌いなあなたは、会社に迷惑をかけて大丈夫なの?平常時であれば『飲みに行く』こと自体は反対しないが、今のご時世、飲みに行ってほんとにそれでいいの?」と夫の良心に訴えかけてみる。

 

「そんなに俺が飲みに行くのが嫌か」と全く筋違いなことをのたまった挙句、「俺は会社に怒られてもどう思われてもいい」と本心ではないことを言い、しばらくして少し考えた様子だった夫が重い口を開いた。「そんなこと言いだしたら、九月に行こうとしてるモモちゃんとの旅行だって行けないってことになるよな…」

 

なんて乱暴な意見。旅行好きな私から旅行を取り上げるなんてことになったら、そりゃもう「なら飲みにでもなんでも行ってくれ」と言うしかなくなるではないか。

 

そうして降参するしかなくなった訳だったが、神様私の事を見捨てはしなかった。飲みに行く予定だったその日、夫は飲まずに帰って来たのである。「モモちゃん…俺のこと呪った?今日午後から具合悪くなって吐いた…だから飲みに行くのは諦めて帰って来た」

 

呪ったつもりはなかったが、もしかしたら私の関知しないところでなにかがどうにかなって、私の生霊が夫に何かしたのかもしれない。それも愛ゆえか。それにしても私の鼻が守られてよかった、と心底ほっとした。

 

f:id:momosjournal:20200526093206j:plain

ありがとう。