潔さを感じる秋の夜長

秋の夜長。夫が誰かが外で喧嘩してるというので、どれどれ高みの見物とでもいきましょうかね、と普段はとてつもなく重い腰をこのときばかりは軽々と上げてベランダに行き、下の通りを見渡してみるとそこには人っ子一人いないのであった。

 

誰もいないのであるが、女性の甲高い叫び声が夜空に響き渡っていた。人さまの喧嘩を盗み聞きするのはいけないこと、というのは分かってはいるが、興味が勝ってしまうし、そもそもその通りに住んでいる人ならきっと誰でも聞こえてしまうような声量であるので聞こうとしなくても聞こえてくるのでこれはもうちゃんと聞くしかないでしょう。

 

叫んでいた内容を要約すると、その女性の家族の誰か、もしくは全員が「ちゃんとやってくれない」「なんでいつも私ばっかりが」「〇〇してって言ってるの」ということらしく、最終的に「もうこの話はしたくない」で締めくくられた。

 

この女性の何が潔いかって、近所に住む数百世帯が窓を開けているだろうこの時期に思いっきり叫び声をあげたことも一つだが、何よりも「もうこの話はしたくない」で本当に怒鳴り散らすことを終了させたことである。私であれば、「もうこの話はしたくない」と言った後も5年くらい前の話まで持ち出してあと2時間くらいは執拗に叫び続けていただろう。

 

それにしてもこの女性、あんな甲高い声であれだけ叫んでいたからおそらく今日は声が出ないに違いない。それくらい鬼気迫るものであった。

 

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